弁護士ブログ

女性総合法律事務所ラレーヌビクトリア

~KSL~

18時から、北九州市立大学植木淳教授のゼミにお邪魔して、学生の皆様とゼミを開催して討論を行いました。

本日のテーマは、「脱法ドラッグ」。

当初は、「合法ドラッグ」と呼ばれていました。

「合法ドラッグ」とは、法律に基づく取締まりの対象になっていない薬物のことで、麻薬と同様の効果を持つ物質を指します。

合法ドラッグは、その響きから、「合法の医薬品」という印象を受けがちですが、これは薬物乱用を意味する日本語の「ドラッグ」に、業者やマニアが宣伝と自己弁護のために「合法」と形容したものなのです。

「合法ドラッグ」という呼称は、一般市民や使用者に対し、これらの薬物が法に抵触せず、安全性が確保されているという印象を与え、薬物乱用へと誘発しかねない不適切な表現であるとして、行政機関では「脱法ドラッグ」と呼称しました。

改正薬事法により、「指定薬物」という新たな区分が設けられ、危険性の高い脱法ドラッグを更生労働大臣は薬事・食品衛生審議会の意見に基づき、指定薬物に指定することができます。そして指定薬物に指定されると、医療等の用途を除いて製造や輸入やその広告が禁止され、行政は指定薬物の検査・廃棄・回収・立ち入り検査などを行えます。

また、指定薬物の製造・輸入・販売・授与目的での貯蔵・陳列には罰則が設けられます。

ただ、脱法ドラッグで利益を上げようとする場合、指定薬物の成分に化学変化を生じさせて指定薬物逃れをするため、イタチごっこ状態になっています。

とはいえ、「体に有害な薬物」を陳列した場合は罰するという規定を設けると、罪刑法定主義(萎縮を生まないように、犯罪と罰則は処罰されるべき行為が行われる前にあらかじめ法律によって明示・公表しておかなければならないという原則)に違反します。

ではどうすればいいのでしょうか。

議論の中でオランダの例が出てきました。オランダでは、ドラッグを、ソフトドラッグとハードドラッグに分類し、大麻をソフトドラッグと定義して、ほぼ合法として扱い、許可を受けた店舗で合法的に販売しています。

これによって収入源を奪い、あらゆるドラッグを扱う密売人との接触機会をなくすことで、害が深刻なハードドラッグ類の蔓延を阻止する政策を取っており、実際にヘロイン使用者が減少し、大麻使用者も増加していないなど、一定の効果を挙げていると言う報告がある。

しかし、討論の中で、ソフトドラッグが合法化されて普通に手に入るようになれば必ず刺激を求めて究極のハードドラッグを入手したい欲求に駆られる人が出てくる、そして、その時ハードドラッグの価額はそれまで以上に跳ね上がっているのではないかという意見が出ました。

私もそう思います。人間の欲求は限りないものです。ドラッグに興味を持たなくていい環境を作ることが第一ですが、規制するにしても罪刑法定主義との関係では現在の指定薬物方式で臨むほかないと私は考えます。